ありふれた存在のウイルスを利用した新しい電池が開発された。
その性能は、一般の電子機器やハイブリッド自動車で使われて
いる最新式充電池に劣らないという。
現在のリチウムイオン電池で使用されている電極は高コストで
有毒なため、安全で無害な材料が探し求められている。
研究で使われたのは、バクテリアだけに感染するM13という
ウイルスだ。研究チームはこのウイルスに手を加えて、ウイルス
表面で非晶質(アモルファス)リン酸鉄を引き寄せるタンパク質が
成長するよう仕向けたのである。
その結果、非晶質リン酸鉄を原料とするナノメートル幅のワイヤー
が作られた。非晶質リン酸鉄は、リチウムイオン電池の電極に現在
使われている金属リチウムより低コストで環境にも優しい。
さらに、ウイルスはその一端がカーボンナノチューブと結合する
ようにも操作されている。カーボンナノチューブは極めて優れた
電気伝導体であるため、電子はカーボンナノチューブを高速移
動して非晶質リン酸鉄のネットワークに届き、エネルギーが非常
に短い時間で伝達されることになる。
チームはこれらの素材で電極を作り、市販のリチウムイオン
電池に性能面で劣らない硬貨ほどの大きさの電池を開発した。
「得られた性能は積み重なる遺伝子操作の結果だ」と、アメリカの
マサチューセッツ工科大学(MIT)で材料科学を研究している
アンジェラ・ベルチャー氏は解説する。
カーボンナノチューブは依然として高価であり、環境に対する
リスクもまだ結論が出ていない。カーボンナノチューブが実用化
の障害となる場合は、金や銀といったほかの優れた電気伝導体
で代替することもできるという。
研究はまだ初期段階だが、今回のデモンストレーションで示され
た2倍の電力性能をすぐに実現できるとベルチャー氏は考えている。
研究の詳細は、オンライン版「Science」誌の4月2日号に掲載され
ている。
Charles Q. Choi for National Geographic News


